
1. はじめに
大切な方を亡くしたあと、「あれ、自分はこんなに物忘れがひどかったかな」「簡単な家事さえ、うまくできない」と感じたことはありませんか。以前は当たり前にできていたことが、急にできなくなってしまうと、「自分は壊れてしまったのでは」と、不安になってしまいますよね。
でも、それはあなたが壊れたからではありません。今日は、そんな心と頭の状態を「グリーフブレイン(悲嘆の脳)」という言葉から見つめ、あなたに「休んでいいんだよ」という許可をお届けしたいと思います。
2. グリーフブレインとは何か
グリーフブレインとは、大きな悲しみを経験したあとに起こる、脳の一時的な機能低下のことです。集中力が続かない、簡単な計算や段取りができない、さっき置いたはずの物をどこに置いたか忘れてしまう。
こうした変化は、決して珍しいことではなく、深い悲しみを経験した多くの人に、共通して起こるものだといわれています。これは、あなたの能力が落ちたということではなく、脳がとても大きな作業をしているサインなのです。

3. なぜ、こんなに頭が働かなくなるのか
私たちの脳は、大切な人を亡くしたとき、その喪失を受け止めるために、想像以上に大きなエネルギーを使っています。悲しみを処理するという作業は、目には見えませんが、脳にとってはとても重い仕事です。
そのため、日常のちょっとしたタスクにまで、エネルギーを振り分ける余裕がなくなってしまいます。いわば、脳が「悲しみの処理」という、いちばん大切な仕事にフル稼働している状態。だからこそ、料理を焦がしてしまったり、約束をうっかり忘れてしまったりしても、それはごく自然なことなのです。

4. 「休んでいい」というメッセージ
真面目で頑張り屋さんほど、「こんなことではいけない」「ちゃんとしなくては」と、できない自分を責めてしまいがちです。でも、今のあなたに必要なのは、気合いや根性ではなく、休息です。脳が悲しみと向き合っている間は、たくさんのことを完璧にこなせなくて、当たり前なのです。
私も何日も何日も、何もできず横になるだけの日々が続いていて、何かしないといけないけど、何をしていいかわからず、今まで何をして過ごしてきたのかもわからなくなってたり、何かに焦る気持ちだけはありました。
でもね、今思えば家事が少しくらい滞っても大丈夫。予定をひとつ、ふたつ忘れてしまっても大丈夫だということ。
それは、あなたの心が今、いちばん大切な作業に取り組んでいる証拠です。どうか、「できない自分」を責めるのではなく、「今は休んでいい時期なんだ」「今はこれでいいんだ」「こんなもんなんだ」と、自分に優しく声をかけてあげてください。周りの方に頼ること、家事を減らすこと、予定を詰め込まないこと。そのひとつひとつが、あなたの脳を守りあなた自身を守るための、とても大切なケアになります。
5. おわりに
物忘れが増えたり、うまく物事が進まなかったりするのは、あなたが弱いからでも、壊れてしまったからでもありません。それは、あなたの脳が、ちゃんと悲しみと向き合っている証です。
どうか、今は無理をせず、できないことがあっても自分を責めず、ゆっくりと過ごしてください。「今日も何もできなかった」それでいいのです。あなたの脳は、今、いちばん大切な仕事をして、あなたを守ってくれていますからね。
ハッピー相談室Az 大和 由起子
